明日のように
プル式
僕は手紙を書きましたが投函できず
結局その手紙は引き出しの中に沈んで行きました
そうして毎日引き出しの底から
静寂を運んできました
僕は海に行きました
青いハーフパンツの水着を持って行きました
誰もいない夜の海岸で寒さに震えて
しばらく海を眺めて帰りました
バスタオルの匂いをかぎながら
鏡の向こうに居るはずの君を眺めました
オレンジの照明に浮かぶ人間は
どう見ても僕しか居ませんでした
少し遠くの町に行こうと思いましたが
電車に乗って気が付くといつもの駅に降りていました
仕方が無いのでそのまま歩き
小さなパン屋で卵パンを買いました
それから毎日の日々が少し変わりました
何が変わったのか判りませんでした
それでも毎日小さなパン屋でパンを買います
そうして店の前の小さなベンチでパンを食べるのです
僕は二十年後の自分を思い浮かべ
そうしてパンを食べ終わると家に帰りました
引き出しの中から手紙を出すともう一度読み直し
台所のゴミ箱に捨てました