明日のように
プル式

僕は手紙を書きましたが投函できず
結局その手紙は引き出しの中に沈んで行きました
そうして毎日引き出しの底から
静寂を運んできました

僕は海に行きました
青いハーフパンツの水着を持って行きました
誰もいない夜の海岸で寒さに震えて
しばらく海を眺めて帰りました

バスタオルの匂いをかぎながら
鏡の向こうに居るはずの君を眺めました
オレンジの照明に浮かぶ人間は
どう見ても僕しか居ませんでした

少し遠くの町に行こうと思いましたが
電車に乗って気が付くといつもの駅に降りていました
仕方が無いのでそのまま歩き
小さなパン屋で卵パンを買いました

それから毎日の日々が少し変わりました
何が変わったのか判りませんでした
それでも毎日小さなパン屋でパンを買います
そうして店の前の小さなベンチでパンを食べるのです

僕は二十年後の自分を思い浮かべ
そうしてパンを食べ終わると家に帰りました
引き出しの中から手紙を出すともう一度読み直し
台所のゴミ箱に捨てました


自由詩 明日のように Copyright プル式 2007-12-01 00:32:44
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