熱視線
渡 ひろこ

教室の窓から3列目
頬杖ついて黒板を見る横顔に
囁きかけて…って思ってしまう


第2ボタンまで開けた白いYシャツ
肘までまくり上げた袖から続く
長い指の爪の先まで見つめてしまう


油断して目が合ってしまったら
ちょっと驚いた感じで
思いがけず軽く笑みを返してくれた




真綿を薄くちぎったような愛 と思えてしまった




そう キミは博愛をまきちらす
ああ…でも
少しばかりの愛では
すぐに乾いてしまう
いつでも潤っていたいのに


悟られないように
溺れないように
心をきつく結んでいたのに
いつの間にかほどけて
ゆっくり確実に浸入してくる
この熱い潮流は何だろう


手のひらですくおうとしても
もう 溶けて 染みて
浸潤してしまった


抵抗してもあらがえない
戸惑いと焦燥感と切なさを
もてあまして
どこに捨てればいいのだろう




暗い部屋の中
蛍光スタンドの灯りたよりに
教科書を開いても
同じ夜空の下
何してると
キミを想う


今夜も
溜め息まじりの
窓越しに
月をも焦がす
熱視線










自由詩 熱視線 Copyright 渡 ひろこ 2007-11-30 01:18:19
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