蛇殺し
弥勒ちんげんさい
子供の頃 蛇を殺した
公園のグラウンドを引きずり回す
棒で何度も叩き
ぐったりした体を掴む
尻尾を持って鞭のようにコンクリートに叩き付けた
蛇の丸い目は何処を見ているのか
手を止めてよく見ると口から血を吐いていた
興奮も冷めてきた
それをトーテムポールに巻きつけた可愛らしい子供たち
補助輪の付いた自転車で公園から立ち去った
3日しても其処に巻きつく青黒い体
僕は近づいて凝視する
生きていた時 僕の手首に巻き付いた感触
なめし革の如く光りを放つ 整った鱗
蛇を掴み 家の近くの沼地に捨てた
ある晩見た夢の話
農道やアスファルト 田畑のいたる所を蛇がうごめく
僕は よけながら前を向いて走る
4〜5mの真っ黒で太い蛇が無数にうごめく
絡まった蛇溜まりが幾つも点在する
頭の2つ有る蛇たちが鎌首を上げる
必死で逃げる僕は何処へ向かおうとしているのか
気づけば僕は 全身を蛇に絡まれていた
肉を食われ体内まで這いずり回る
しかし何の感覚も無い
巨大な蛇の背を歩く蛇の塊が客観的に見える
僕は自分を 蛇の王だと思い始めていた
もう蛇を恐ろしくなど感じていなかった