かさなりつづける、朝に
望月 ゆき
枝分かれしていく 夜の
長く、しなやかな腕は
わたしを覆いながら それぞれ
しだいにたわんで その先端からやがて
着地し、朝に触れる
不必要なほどに震える あなたの
声と、指先が
時折 わたしに刺さり
痛みを上書きするので
昨日の傷痕の理由さえ、もう
思い出せない
朝は ためらうことなく
捨てられたすべてのものを
回収していく
そうやって世界は 美しく保たれる
要るものも、要らないものも、
わたしによって手折られた、枝を
挿し木する所作で
呼吸ははじまり、いつしか
あなたが触れなかった その部分の
体温だけが、ゆるく上昇していく
そうして、うまれ続ける日々に あなたの
「おはよう」の言葉さえ、
単なる口癖にすぎなくなっていく