うつくしい空き箱
ふるる

もしもここに
うつくしい空き箱があったなら
お風呂のように入って
外を眺めよう
風の吹く
外はやさしいように見える
口笛も吹こう
あの懐かしい歌

箱の片隅には
ヒイラギが落ちているから
赤い実も落ちているから
冬だったんだと分かる

外から
口笛がこだまのように返ってくる
懐かしい
今吹いたばかりの歌が
こんなにも懐かしい

赤いケトルで
お湯を沸かそう
ストーブの上に乗せて
お湯が沸いたら
二人分のお茶の葉っぱを入れよう

会えるだろうか
あのこだまの人に

もしもここに
うつくしい空き箱があったなら
お茶を飲みながら
耳をすませたい

風の吹く
外はやさしいように見える
あの懐かしい口笛
もう一度聞こえるかな
もう一度聞こえるかな

外では
冬と雪が混ざって
お湯はもうすぐ沸く

かすかに聞こえる
口笛遠く


自由詩 うつくしい空き箱 Copyright ふるる 2007-11-27 13:04:26
notebook Home 戻る  過去 未来