古いレコードを聴いていた
涙(ルイ)

古いレコードを聴いていた
早春の雨が 窓辺を濡らすこんな夜
がらんどうの部屋の中 
響き渡るジャニスの声


君がとても愛した曲
理由がわからないといって
怒らせたこともあった

ねぇ君 あの頃ぼくたちは
何を見つめて暮らしていたんだろうね
愛というには照れくさすぎて
幸福というにはあまりに幼すぎた
求めていたものはきっと同じだったはずなのに
戯れに傷つけ合うより方法を知らなかった
あの頃のぼくたちは


君をはじめて見たのはいつの日だったか
枯葉が静かに舞っていたね
街外れの街灯の下 震える躰ささえ
遠くの空を探していた


街路樹が風に揺れて孤独を誘う
いつも君は そんなことを云っていた気がする


ねぇ君 あの日探していた空は見つかったかい
ぼくはまだ あの日君の瞳に映った空の色を
ずっと忘れられずに
君が忘れていった古いレコードを
いまも聴いている
 

雨は すっかり止んでしまった


自由詩 古いレコードを聴いていた Copyright 涙(ルイ) 2007-11-27 10:57:34
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