grape
水町綜助

人波が隙っ歯に駅のホームを行く
あらためて見れば鉄箱に
みんな乗り込んで葡萄の房のような
それくらいの密度で
つぶれて貨物列車だ
果汁に似せた
澱のような

きらめいた
それぞれの
「たとえば飼い猫が、家出をしてしまったような、きもちの」
毎日が
車両の床に溜まる

新しい電車に乗り込む革鞄
四両目に座り
もう飽き飽き

♪ ピン ポン

ドアの閉まる予告音に
無感動
そりゃあ
そのように
のったのだから

ピンポン

乗り継ぎ駅の朝
駆け足に
そうだな
この季節なら

白い息

さまざまな肌の色
たとえ島の中に生きていても
毛色はそりゃあ違う
めをみはる

吐息の交錯

そんな朝の風景がよぎり
すぎる中で
やはり人波は隙っ歯に散らばって
おそろしいほどに
様々のことを
思っている
ゆるやかな
どうしようもなさの
(たとえば飼い猫をみうしなったような)
かなしみを
瞳にのせて
行き交う人波をみても
すかされて
散らばっていくだけ
こんな駅のホームなら
お誂え向きに
終着の片側なら
右から左へ
東から西へ
吹き流れるだけ
それぞれの幸せの埋蔵へ
(たぶんそれは)
(家族だとおもうんだ)
(いまの俺は)
向かうなかに
溶け
見捨てられていく





葡萄畑の

はた け?

棚の下を
あるく
こんな冬の始まりともおもえない
つくりものじみたくらいに
かがやく質の青色の
透かされた正午くらいを
たくさん

流して
歩く

Muscat
風船のかたち
膨らませた
ぼくたちの
ありか
あるべき拠
房になって
寄り添っている
隙間のないように
どれだけ刻まれたのか
しらないほどの
仔細な時間にすら
わかたれないよう








自由詩 grape Copyright 水町綜助 2007-11-27 08:17:44
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