シャドウボクサー
服部 剛

小さい頃 
目の前に立ちはだかる 
でっかい親父と向き合い 
パンチの練習をした 

額にあてられた 
ぶあつい手に 
視界を覆われ 
打っても打っても届かない 
小さい拳 

「 ほれほれどうした、もっと打て 」 

めくらめっぽう空を切る 
届かぬ拳の上のほう 
見えない親父の顔が笑ってる 

大人になった今となっては 
親父の髪もうすくなり 
パンチの相手も変わったが 

あの頃 
目の前に立ちはだかった 
親父のぶあつい手を 
今も時折思い出す 

「 ほれほれどうした、もっと打て 」 

明日から幕を開ける一週間  
見えない壁に向かって 
あの頃の拳を打ち続ける 

タイムカードを挿しこみ 
音の無いゴングが鳴りひびく 
週末の夜まで 





自由詩 シャドウボクサー Copyright 服部 剛 2007-11-26 01:01:06
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