対岸
木立 悟





つかんだ指のむこう側に
つかむものの無い手のひらがあり
こだまにこだまを描いている


思い出せない景色の絵葉書
置き去りにされた花束の色
河口の波と雲の色


紙の機械に点滅する音
中途半端な大きさを切り
少しとげとげしくなるかたち


片方で雪は溶け 片方で雪は降る
川岸に打ち寄せる音に浮き
重なりつづける双つのもの


水を伝い来る嗚咽を抄う
無と一の手のひら
やわらかな 手のひら


霧の輪があり
枝と音に触れ
剥がれ落ちながら回っている


鳥が花をついばんでいる
波と雲はさらに近づく
紙の街に雨が降る


こだま こだま
手のひらから来ては帰りゆく
やわらかなものへ帰りゆく














自由詩 対岸 Copyright 木立 悟 2007-11-25 13:56:27
notebook Home