鼓動みくまく
木葉 揺
あの頃の十一歳は、生理で休むなんて言えな
くて、シャワー待ちのマーメイドギャングを
蛇口ひねって一網打尽。がっさがっさとふる
いにかけて出てきたコだけが五年後も信用で
きる。
そんな気持ちで巫女さんが差し出す木筒を揺
すっているのだけど、穴と棒の相性の悪さに
「凶でもいいから」と汗ばんで振り回す。出
てきた大吉に疑いを持つなんて、感性の一つ
が消えていくはずだ。でもまだわずかに近く
に浮遊している気がして、蚊をやっつける感
覚でむやみに宙をつかむ。何度もつかむ。そ
のダンスが認められて代役が決まった。
台本も打ち合わせもなく舞台へ蹴り出され、
暗闇に浮かび上がる顔たちを目の当たりにす
ると、とにかく両手でライトをさえぎり「見
ないで、見ないで」とゼスチャー。すぐに地
の底から重低音溢れる。懇願するように袖を
見ても、しっしと圧力あるのみで、押し戻さ
れる姿にまで、また地はクツクツ沸き始める。
マグマよ、人間は安らかに居たいのです。思
い上がりを詫びるから、今しばらく無関心で
いて。呟きながらヘリを待つ、グランドキャ
ニオン一人ぼっち。
待ち続けることの心身への悪影響は知ってい
る。だから足を滑らせる前に眼下の世界を丸
めてころん。対話をし損ねて仰いだ両手が体
にからみつく。ねじれゆく自分自身。糸車の
切っ先はもう、黒点にしか帰れなくなるんだ
ろう。だけど美女が眠る毒性を黒点が許すは
ずもなく、意地悪な二択をしかけてくる。し
かもその出題を六十字以内で説明しなきゃ帰
ることもできない。だから大きい2番の問3
て嫌いなのよ。そう呟き、ふと職員室の日本
シリーズに全運命を託す。ああ、トランペッ
トが大気圏を破った!