グッドナイト
ホロウ・シカエルボク
眠りが浅くて
何度も同じ夢を見る
形にならない世界
言葉にならない世界の夢
破れたシャツばかり身にまとって
午前零時には目を覚ます
冷たさに曇った窓を見て
カーテンの透間を直す
一番小さなあかりにした電灯は
知らず知らずを裸にし
もう一度もう一度と
幻灯機のように稼動音を鳴らす
ぼくが見つめているのは
いまの光なのか
衝動的な憔悴
もはや存在など
まなこに紛れ込んだ塵のようなもので
見つめようとしたって見ていられるものではなく
ほら、隅っこへ逃げていくぜ
舞台はとっくに暗転しているんだ
出番も無いのにどうして突っ立っている?
やって来るところも出て行くところも
心許無いのにどうして
隙間風だけはきちんと入り込む
老獪な押し売りのように
どうして貧相な胸ぐらをつかみにわざわざやって来る?
ぼくは自問したが、それは冬のせいではなかった
適当な手ごたえを見つけるまで放っておいてください
それは一度開き損ねたつぼみのようなものです
適当な手ごたえを見つけるまでどうか放っておいてやってください
あなたは指先でつまめばいいと考えているようだけれど
損ねるにはきっとそれだけの理由があったのです
陽のあるうちから比べるととても長い流れのようだ
文字盤を行き来する針は
気づかれないように胡坐をかいているに違いない
いつでも、いつの瞬間でも
わかることはわずかなのだ、枕の感触が
いつまでもしっくりこないそういうときには特に
ぼくは時間割をつけたのだ
寝物語の変わりになるかもしれないと思って
この先命をしくじるまでの長い長い時間割を
途中で馬鹿馬鹿しくなって止めようとしたが
それはそれでふんぎりがつかなかった
ようやく死因を決めたとき
そもそもの成り立ちを忘れていた
一番小さなあかりにした電灯は
知らず知らずを裸にする
破れたシャツばかり身にまとって
カーテンの
透間を直している
うちに
朝