銀杏並木
いすず
あなたと歩いた大学通りには
銀杏並木があるの
黄色に色づく頃には
いつも一緒に歩いてた
緑の若葉の匂う頃も
葉がみな落ちてしまう枯れ木の頃も
銀杏のそばを通ると あたたかい気持ちがする
銀杏並木は ずっとつづくアーチ
図書館から ある会館の前まで
短い道も 一緒に歩くと 長く感じた
あなたの肩先に触れて ぬくもりを感じた
銀杏の実は見たことがないと話していたね
臭くて硬いけれど、食べると美味しいの
そのはなしを興味深げに聞いていたね
あの頃の銀杏をふたりで思い浮かべながら
また、歩いてみたいね この寒い北の街で
銀色の夕暮れを歩いていると
いつも気持ちがあの頃にスリップする
あなたが笑って なかまがそばにいて
みんなでなかよく輪になってた
そのなかでひときわ目立つあなたを見ていた
どこも派手なところはないのに
はなしぶりも おだやかで
謙遜しながら 落ち着いて笑う
そんな控えめな笑顔を見ていた
冬にアイスだって、と学祭で
両手にタイヤキアイスを抱えてまっさきに見せてくれた
置いてあった焼きそばを食べてしまったら、
きみならいいよ、とさりげなく微笑った
気持ちが近くなっていっても
自然に心が溶け合うまで待っていてくれた
沢山の思い出も とてもなつかしいの
きっとあなた以外のひとに出会っても
いつでもあなたに帰るんだろうな
この 今世が終わっても
黄色に舞う 木の葉が心の窓を掠めてゆく
あなたも今 きっとどこかで微笑んでいるの