美術応援団
佐々木妖精

美術館の床に
放射線状のくもの巣を見つけ
一時間鑑賞した
糸は中心に女性を包み
素肌を庇うように滴っている
家主がいないのをいいことに
盗撮しようかと思い
ひたすら凝視した


ねえ



てば

草間彌生の圧倒的な水玉の横に
虹色の埃を見つけて
それを目で追っているうちに
ピカソへたどり着き
爆笑した
本質を凝視しようとして混乱した巨匠は
焦点定まらぬ筆で
空飛ぶ河童を頭から垂らした
ゲルニカを見てゲラゲラ笑っていると
彼女がぶった

ぶたれた俺はしょぼくれて
帰りに肉まん買ってもらった

肉まんの本質は
あふれ出る肉汁であり
もっちりとしたホカホカの生地であり
肉まんそのものなのだから
混乱する必要は
ない
対象からボケた本質などないのだから
書けばいいんだ
ただ河童を見て
書けばいい



感じたこと

考えたこと

今迷っている表現

一度は否定されてしまったこと

それらはきっと

どこかで正しいのだから

自分は正しいことをしていると

自信を持って欲しい

ゲルニカは河童が全てだと
俺も自信を持っている
そうして何よりあのクモの巣の美しさは
邪気のないクモが
重力と共同制作した
無垢な作品であることも


ほら

うつろいながら

人々を看守っている

通りすがりのチェシャ猫が

それでいいんだよって今、囁いた


自由詩 美術応援団 Copyright 佐々木妖精 2007-11-21 22:26:59
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