ダンス(同じ小節)
ホロウ・シカエルボク
うつろな夜に足元をもつれさせながら踊る
おまえのことを不器用だとは思いたくはない
月明かりは冷たく、病のように青白く
半身起こしたベッドで夢魔の尻尾を逃した
うつろな夜に足元をもつれさせながら踊る
おまえのことを不器用だとは思いたくはない
ケトルは沸騰し続ける、凍てついた空間に
意地のように蒸気を吹き上げている
美しいが
触れるときっと指を傷めるだろう
誰のための支度だ、テーブルの上の茶器
キャンセルされた予定のようにずっと伏せられている
顔を上げたりしないのかい、おまえ
閉じたガラス戸の向こうでヤモリが
もう飛ばなくなった虫を探している
もう暖かくなることは無いんだ
草っぱらの向こうにでも身を潜めればいいのに
欲しがれば欲しがるだけ
傷は深くなるんだよ
凄く晴れた、と言っていた
凄く晴れたと、ラジオが
電池が切れる少し前に
凄く晴れたと言って
死んだように黙った
それを死と言えば言うことは出来た
でも俺はもう思春期のほとりには居ない
すべての言葉は並べるだけ真意に反比例する
僅かに絶望を指した窓越しのヤモリの影
明日は晴れるのかい、おまえはもう
顔を上げることはないのかい?
乱雑に仕立てられたコートのようなステップ、影までが迷って
影までが迷って
忘れられない壁のいくつかの残像
ダンス
ダンス
同じ小節を
何度も何度も
おまえは間違い続ける、だけど
そのことを否定しはしないのだ
閉じこもる自分を素敵だと信じているみたいに