「土曜日、手前」
菊尾

いつだって冬色の色彩感覚で
何にしたって閉鎖的
開いては、閉じる
掴んだ時のぬくもりと
離した時の熱の掃け方を見つめている


はやしたてたって何も出てきやしないよ
焦らせても泥に足を取られるだけだよ
酔えないって
色水としか思ってないからだろ


空色の雨が降って
粒の一つ一つに見えている世界が反射して
切れ間から覗くのは嘘が無い国の断片
遠い話を思い出して
君は何か掴もうとする仕草
無口な代わりに細い腕は植物のように空へと伸びる


千切った記憶は改善されて
幸せです。と君は手を振っている
あんな形の線引きは俯く数だけ増やしていった
本当は改悪です。知っています。
言い逃れられないから
根元から引き抜いたんだ


嫌だから
あてられる目なんてもう無いから
そうやって明け方に
見知らぬ場所へ溶けていった
消えないのは
右斜め下への視線


自由詩 「土曜日、手前」 Copyright 菊尾 2007-11-21 20:29:02
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