ムラコシゴウ



? 冷雨


踏みしめるたびに僕の右足の靴底が
ひゃあひゃあ
鳴っている


今日はやけに
ひゃあひゃあ
鳴っている




*****


? その息吹を継ぐものへ


子どもよ
まだ歩み始めたばかりの子どもよ


覚えておくんだよ
君の身体には
詩人の血と
息づかいの音符が
受け継がれているんだよ


覚えておくんだよ
君は
彼の大きく
広がる陽光の手に抱かれて
微笑んでいたんだよ


覚えておくんだよ
君の瞳には
彼の見た妙なる碧空の世界と
残された僕らの希望が
光っているんだよ


そして
子どもよ
いつか
彼がいたエリアに立ったそのとき


君にもわかる日がくるさ






君の父親は
せんちめんたる・ふーる


かつて
アカムラサキの花を愛し
君を愛し
そして僕らを
五線譜のない音楽の流れる世界へと
いざなってくれた


稀代のビルトゥオーソだ


かつて
アカムラサキの花が愛し
僕らが愛し
そして君が
見上げたその瞳の中で
清らかに微笑んでいた


不世出の優しき魂だ




君の歩みは
もう輪廻の音を奏ではじめている
遠き刹那への長い道のりへと


子どもよ
まだ足下は覚束ないけれど





*****


? 冷雨


踏みしめるたびに僕の右足の靴底が
ひゃあひゃあ
鳴いている


今日はやけに
ひゃあひゃあ


泣いている




自由詩Copyright ムラコシゴウ 2007-11-21 15:21:22
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