心の病
壺内モモ子
「インフルエンザになったのよ」
と、嘘をついた
インフルエンザに、かかったことのない私には
インフルエンザがどういうものかわからない
けれど
一週間くらい、アルバイトに行かないで
ぼーっとしていたかっただけだ
インフルエンザ三日目
嘘をついて三日目
彼がお見舞いに来てくれた
「だいじょうぶかい」
「ええ、だいぶよくなったわよ」
「じゃあ、デートしようか」
「ええ、そうしましょう」
外に出て、手をつないで歩いた
公園でキスもした
幸せだった
そんなところを運悪く
バイト仲間に見られてしまった
怒られた
「インフルエンザなら寝てなきゃダメだよ。周りの人にうつったらどうするの」
って
会いに来てくれた彼も
つないでいた手を振り払い
いきなり私をバイキン扱い
バイト仲間も、私の彼も私の嘘を見抜いたかのように
冷たい視線で私を見ていた
私はただ
アルバイトを休みたかっただけなのに
私は知らなすぎた
インフルエンザの辛さを知らなすぎた
孤独を知らなすぎた