夜を媒介する
岡部淳太郎

夜を媒介する。私たちはためされてはかられて、いまこ
こにいる。あるいは朝を、また昼を媒介して、私たちの
心身が伝導体となって、少しずつ接触していく。私たち
が味わう陽気や狂気も、ひとつの通りすぎる直線。世界
の真円のごくわずかな部分を占める、私たちは逃げてい
くいびつな曲線。私たちはためされてはかられて、ここ
にいる。膨張しながら、そこにある宇宙をはかれば、の
こされた暗い顔が眼をひらく。水を媒介し、火を媒介し、
日々出会うもののすべてを通りぬけさせて、それだけで
私たちの生は認められて、ここにある。溶解する内臓や
骨格の音は、ただの空耳。ほんとうの世界やほんとうの
私を求めることなく、すべてを通過させる風穴のような
実体として、ここにある。夜がすぎれば、朝がくる。私
たちはためされてはかられて、悪夢から目醒めて、それ
ぞれ隣のもうひとりの私に、おはようと、声をかける。



(二〇〇七年十一月)


自由詩 夜を媒介する Copyright 岡部淳太郎 2007-11-18 23:46:01
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散文詩