ニート・フリーターのウソ・ホント
風見鶏

 近年、NEETと呼ばれる「教育を受けず、労働をおこなわず、職業訓練もしていない人」が増えてきていると言われています。また、フリーターと呼ばれる雇用体系に融通が効く状態に甘んじている「フリーランス・アルバイター」も増加してきていると言われていますが、この二つの言葉は「就業意識やモラルに欠けた若年者を侮蔑する言葉」として、同じように使われる場合が多いです。偉い学者さんやマスコミがそう扱っているのだからたぶん間違いは無いのでしょう。

 そういえば興味深い言葉があります。「ニート利権」という言葉をご存知でしょうか。かいつまんで言ってしまえば、ニート対策に関連する利権の事で、特殊法人の創設や支援施設、または研究調査などに付随する権益を表す言葉だったりします。そもそも、メディア上で「NEET」という言葉が出始めたのとほぼ同時に政府が「NEET対策」を打ち出したというタイミングの良さは実に異質なものだたりします。そして事実として、今まで細々と「ひきこもり」への支援を行っていた団体が、「NEET支援」を謳い出したとたんに多額の支援金を享受するような自体が起こっているようです。お金の出所はもちろん税金。具体的な数字を出すと、例えば厚生労働省が推進した「若者自立塾」は、平成17年度の初年度に9.8億円の予算を受け取っていますが、想定していた1200人から実際に入塾したのは500人足らずと大幅な定員割れを起こしているのにも関わらず、翌年の予算は倍増されてますし、配分も極めて不明瞭な状態にあります。

 それを踏まえた上でもう一度極所極所に目を落としていきましょう。そもそもNEETというのはこんな感じで数えられています。


労働力調査
労働力調査とは、毎月1回、およそ4万世帯を対象とした調査で、ニートは基礎調査票の5項「月末1週間(ただし12月は20〜26日)に仕事をしたかどうかの別」という設問の「仕事を少しもしなかった人のうち」「その他」に該当する人で、かつ15〜34歳までの人となり、2006年の各月の平均は約62万人と推計されている。参照:労働力調査 基礎調査票(総務省)

就業構造基本調査
就業構造基本調査とは、5年に1回、およそ44万世帯を対象(2002年)とする標本調査で、過去1年間の国民の就業状態を調査する目的で行われる。内閣府の平成17年青少年の就労に関する研究調査では、この就業構造基本調査を特別集計し、ニートの規模を推計している。


 さらに言うと、内閣府の調査では、ニートを非求職型と非希望型に分類していて、前者を就業を希望するものの具体的な就職活動等の行動を起こしていない者、後者を就業事態を希望していない者と定義付けしています。世間一般のイメージで言えばニートは「働く意欲が無い者」あるいは「ひきこもり」などと混同されている場合が多いですが、前述の定義に該当する場合は理由の如何に関わらずにニートに分類されます。つまるとこ、進学・留学準備、資格取得準備、家事手伝い、療養、結婚準備、介護・育児、芸能芸術プロ準備、などの状態にあっても定義上はニートに分類されて数えられます。

 以前、数値を分析した事があったのでもう一度分析しても良いんですがめんどくさいので貼り付けます。



とりあえずニートの集計のしかたですが。
労働力調査 就業構造基本調査 と二つあるようですな。
前者が厚生労働省の統計に後者が内閣府の統計に使われてるとか。
二つの調査で調査規模も違う上にNEETの定義も違うから差出すぎ。
ちなみに80万という数字は内閣府の調査のもの。

1992年の調査と2002年の調査を比べるとNEETは増えてます。
でも、そもそも失業者の絶対数が増えてるので割合は変わらないかと。
(割合で考えて良い問題なのかどうかはわからんけども)
もっと細かく言うと、就業する気のないNEETの数はほとんど変わってなく。
就業する気はあるけどアクションを起こしていない人の数が変動してます。

なんとなくこんな表作ってみた
求職型  実際に求職活動をしている人 
非求職型 就業するつもりはあるけどアクションを起こしてない
非希望型 就業するつもりがない

年度 求職型:非求職型:非希望型(千人)
2002 60%:20%:20%(1285 426 422)
1997 58%:17%:25%(993 291:425)
1992 48%:32%:30%(639 257 412)


2001年に定義変更があったのは厚生労働省の労働力調査ですな。労働力調査だと2001年と2002年の間で20万人増えてますが、定義が違うので数値は接続しません。内閣府のニート定義は変更されたのかどうかどうなんだろう。

*「非労働力人口のうち、就業、就学、または職業訓練を受けていない15歳から35歳までの未婚者」に「不登校」や「家事を行わない者」が付加された。

まぁ、間違った解釈してたら突っ込んで頂ければ。
詳しくは↓で見て下さい
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%88
(「青少年の就労に関する研究調査 表2−1−2」の表は間違ってます)

んでは、ついでにこんなコピペを。
社会学者の宮台真司は、本田由紀による『日本のニート・ブーム』の検証を参考に、『激増するニート』という一連の見方を『激増する少年凶悪犯罪』と同様の大嘘であるとし、湧き上がった日本の一連のニート・ブームを、『オヤジ世代の慰みモノ、酒の肴』『年長世代のマスターベーション』と喝破している。



ニートは良く引きこもりと混同されますが就業経験の無いニートってのは非求職型だと4割いません。非希望型だと7割ぐらいいますが。

就業意識があるけれども具体的なアクションを起こせていない非求職型失業者と就業意識があり具体的なアクションを起こしている求職型の失業者の差っていうのは実はあるようで無い場合が多いですな。ようするにハローワークに行ってるか行ってないかの差でしかない。

また非求職型のニートは自分が正社員として雇用してもらえる可能性が低い事を自覚している場合が多いので、それがハローワークから足を遠ざける要因の一つになってるのではないかと思う。(新卒社会と言われるように既卒者の就職は難しいし、大学中退とかだとさらに狭き門になる)

そうなると、就業意識はあっても具体的にどのようなアクションを行えばいいのか分からなくなってしまうわけで。そういった人達にとっては就業への近道が「フリーターとなってアルバイト」となる場合が多い。実際、よしんば決意してハローワークに行ったところで肩書きが非求職型から求職型になるだけで、思うような雇用にめぐり合える確立は低い。ようするに失業者である事には変わりないし、求職活動するにしてもわりと金がかかる。

個人的にニートという言葉は「失業者の増加」を社会的要因ではなく若年者の資質に押し付けたものなんじゃないかと思う。実際そういう見識を出す学者もいる、

2chで流行ってる「働いたら負け」っていう言葉に揶揄されるように労働環境を選ばなければ確かに食べていけるだけの仕事は転がってる。居酒屋でフリーターとか期間工で住み込みとかね。ちなみに俺は非求職型のNEET半年やった後に身内に促されてハローワーク行ったけど仕事に巡りあえず(5社ほど面接まで行って全滅でしたな)、居酒屋でフリーターというコンボでした。月収15〜42万でしたよ労働時間が調整の月が120時間。調整外は250時間とか380時間とかでしたけど^^
確かに選ばなければ仕事はあるよ選ばなければね。
待遇悪いし将来どうなるかわからないけどね。小泉さん。

「その気になれば、いくらでも仕事はあるはずなのに働こうとしない」(小泉純一郎総理)



 ソースはwikipedeiaの文章を基盤に、さらに記事のソースとなる公式文章等まで掘り下げたものなので自分で言うのもなんですが、信用に足る見解であると思います。地味に丸二日ぐらいかけて調査しましたしね。まぁ、素人調べなので限界がありますが。


 さて、そろそろ言いたい事言って飽きたのでこれで終わりにしようかと思ったんですが。上記のNEETに対する考察を見て頂ければわかるように、フリーターに対しても同種のイメージ戦略における偏見誘導が成されています。そもそもフリーターというのは1987年にリクルート社のアルバイト情報誌「フロムエー」の編集長である道下裕史が生み出した言葉で、1980年代後半のバブル経済の時期に、「ミュージシャンや俳優になるという夢を持っているため正社員として就職せずに、日々の生活費はアルバイトで稼ぐ若者に対してプータローと軽視するためではなく、人生を真剣に考える若者として応援していこう」という意味で使われ始めました。しかし、この言葉が使われ始めた1980年代後半というのは日本の経済が好調だった時期の事です。24時間コンビニチェーンの急増や、建設ラッシュに伴う建設業界の人手不足によって、夜間勤務や肉体労働に従事する労働力が求められていました。そのために、夢を追うためにあえて就職しなくても生活を営むことができましたし、雇用情勢が今と違って潤っていたためにその気になれば引き返す事もできたのです。

 しかし、その後バブル経済が崩壊して、企業の経営状態が悪化すると正社員の採用は抑制され、低賃金かつ解雇しやすいアルバイトが、代替の労働力として活用されるようになりました。そのために当時、就職活動をしていた多くの若者が正社員になれず、フリーターとしてアルバイト等で生活せざるを得ない状態になりました。これが俗に言う就職氷河期です。フリーターに対してこのような経緯を無視した場合の年長者の反応というのが、「最近の若者は地に足がついていない」だったり「夢ばっかり追っていて本当にどうしようもない」だったりします。良い歳してその程度の社会認識で生きてこれたのですからバブル経済の頃の大人達というのは非常に恵まれていたのでしょう。 全くもって羨ましい限りです。

 近年では、アルバイトという存在は企業に欠かせない存在になっています。一つの労働階級であると言って良いでしょう。正社員として雇用するわけではないから低賃金で雇える事に加えて、社会保険に加入させる必要も無いので厚生年金を払う事もありません。上層部が搾取するためには低賃金で正社員と同様に働いてくれるアルバイトという存在は人件費を抑える上で必要不可欠な存在なのです。正社員の雇用が抑制されている以上はフリーターという労働階級が現れるのはごく自然な現象であり、個人の価値観やモラルにフリーターである原因を求めるというのはいささか無理があります。それでも、フリーターに対する「いい加減な若者像」が根強く残っているのは、フリーター出現時の夢を追う若者像が強く残っているためであったり、バブル崩壊とそれに伴う雇用縮小という現実を考慮しないままフリーターの存在を酒の肴にしようとする年長者達の偏見もあるのでしょう。


散文(批評随筆小説等) ニート・フリーターのウソ・ホント Copyright 風見鶏 2007-11-18 19:28:40
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