似合わぬ指輪
FUBAR

きれいな声で
うたってた
金糸雀みたいに

誰もいなくなった教室にかばんを置いて
二階の廊下から駐輪場を眺めながら
校庭でもくもくと走りながら
ボールの弾む体育館で人知れず
ほんとうにきれいな声
多くが耳を傾ける

いつからか
きれいな声で
なくようになった
うたわなくなった
忘れたわけではないはずなのに
うたわない

訊くことがことが叶わない声をひとり聞いて
ないている
知る術のない理由をひとり受け止めて
ないている
金糸雀は幾度となく訪れるハネムーンを
どうしてもどうしても
信じてしまっている
後ろの山が
手招きし始めたことに
気づかぬふりをして

棄てられる
棄てられてしまう
いえ いえ と
それはなりませぬ と
とめる人はいても
ないているばかりで届かない
とめる人はたしかにいたのに

棄てられる
棄てられてしまう
いえ いえ と
それはなりませぬ と
とめる人は
もう
いない


自由詩 似合わぬ指輪 Copyright FUBAR 2007-11-17 04:42:39
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