バオバブ
亜樹

県北部の山間の畠では
正月すぎ頃から
収穫されないまま
放っておかれる
黒豆が群れる

実りすぎた黒豆は
収穫したところで
赤字にしかならない
農家は仕方なく
自ら植えた黒豆を
朽ちるに任せるのだ

黒豆は
枝ごと引き抜かれ
ひっくり返されて
乾燥された状態のまま
さしたる抵抗も見せず
何百と群れながら
沈黙する
延々と
延々と



逆さにされた黒豆は
どこか
バオバブの木に似ている





バオバブは待つるのみ畠の肥となるるその日を


未詩・独白 バオバブ Copyright 亜樹 2007-11-15 22:55:30
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