三日月の夜、フーリガンとエクスタシーが相対するセミダブル
ホロウ・シカエルボク
薄暗がりにぼんやりと浮かぶお前のシルエット
振り切れそうなフーリガンが俺の中で騒ぎ出す、堤防は決壊
濁流の中に投げ出された思春期の残り香がもがきながら見えなくなっていく
あらしの夜に正直な野獣は咆哮するんだ
ベッドルームにはすでにその香りが充満している、これ以上の
これ以上の駆け引きはもはや茶番というものだよ
ゆっくりと引き抜いたピアスをサイドテーブルに置いたら狩りの合図だ
お前の草原の息吹で俺はゆっくりとした覚醒の渦に身を捧げ――
そして繰り返されるリズム、死神の鎌のような冷たい三日月が覗く窓の側で
アンチ・クライストな小人が
世界の外へ出るまでの残り時間をカウントしていた
汗は身体を判らなくするための巧妙なシステム、産声を耳にしたような気がするけど
きっとそれは俺の中のタイマーの誤作動
魔女猫の尻尾のような黒雲が三日月を裁断するまで
リズムを繰り返すことをどうか忘れないでおくれ
下世話でいることは正しくない、今夜だけは
自分のままでいることは誇らしい事じゃない、今夜だけは
薄暗がりのヴェールには見なくてもいいものが折に触れ浮かび上がるから
俺がそいつを見ないようにコントロールしてくれ、繰り返すことを
リズムを繰り返すことをどうかやめないでくれ、俺がそれを見てしまうことが無いように、懸命に――懸命に
生きている限り俺たちは臆病者なのさ、激しく狂ったように求めすぎてしまうのは
それをやがて手の中から失ってしまう事の怖さをもう知ってるからだ
月はとっくに隠れた、とっくに
やめないで、やめないで
やめないで、やめないで
暴動は鎮圧されない、いつかきっと
奥底の裂傷は脳髄を引きずり込むだろう