帰ろう
なつぎ

なあ
おまえがいないと
おれは飯も炊けなくて
酒の相手もいなくて
洗剤の量もまったくわからないし
だいたい
おれはバター派なのに
あの買ったばっかりのマーガリンどうするんだよ






急いで髭剃って出てきたんだ
慌ててちょっと切っちまって





なあ
あそこにほら
今赤い日が落ちるから
遠くのビルに突き刺さって
なあ ほら

世界 焼き尽くして

ほら
おまえが隣にいないと





なあ
今だからいうけれど
二十のときおまえをはじめて見て
それがおれの初恋だって言う話
あれは嘘で

おれの初恋の人は
幼稚園のころ
おれに蓮華の蜜の吸い方を
こっそり教えてくれた人で



ごめんな









それから とりあえずおまえは今すぐ
少しの間でも置き去りにされて
ちょっと泣きそうになってたおれにあやまれ








そしたら

そしたら そのあとはずっと
おれかおまえのどっちかが死ぬまでは ずっと




おまえはただ

その満ち溢れたまなざしを

おれにくれればいい




あとはもう


なにもいらないから









ほら


帰ろう











自由詩 帰ろう Copyright なつぎ 2007-11-14 22:38:59
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