彫刻の顔
服部 剛
「 誕生 」という地点から
「 死 」へと結ばれる
一本の糸の上を
わたしは歩いている
頼りなく両腕をひろげ
ひとりきりのサーカス小屋の舞台上を
よろよろつなわたる道化として
忘れた頃に
白塗りの手を入れたポケットから
ひかりの粉を宙に撒く・・・
周囲に
ひとり・ふたり・・・と現れる
母の介護をする友や
定年過ぎても仕事を探すぼくの親父や
その他多くの面々が
星印のとんがり帽を被り
青い涙の滴を溜めた
黒い十字の両目で笑う
白塗りの顔で
ぼくとおんなじように
力無く両腕をひろげ
不安定な飛行のように
震える足でつなわたっていた
あの日揺り篭に寝かされた
「 誕生 」の地点から
いつか墓場に入る
「 死 」へと結ばれる
長い糸の吊り橋と
背後ですべてを包む
ましろい空間に
うっすら浮かぶ彫刻の
誰かの顔の輪郭は
孤独なピエロの群が
それぞれの糸をつなわたるのを
隠れて眺める親のように
( みんなおんなじだよ・・・ )
音の無い声をひびかせる