拝啓
只今、午後九時をまわりました。
この頃夜の冷え込みが厳しく、受験勉強をするのにもまた一段と頭を使っています。
そちらから月は見えますか。
私の部屋は西側にあるので見えません。
あと何時間かしないと見えないと思います。
気配は感じるのですがね。
まるで、あなたの様です。
そこにあなたが居るのはわかっているのですが、一度もお顔を拝見したことがないのです。
それがもどかしさと不安と安堵で幾層にもなって今に至るのです。
不思議ですね。
そんな私は今、あなたを想いこの手紙を書いています。
どうか、この手紙が一日でも早くあなたの手元に届きますように。
ますます寒さは厳しくなるようです。
お体にご注意下さい。 敬具
十一月十一日
緋月 衣瑠香