雲場池、入水
銀猫
夕映えを湛えた水面は
紅葉の最後に火照り
林に、ひっそりと隠れて
雲場池
湧き水の注ぐ豊かは
常に清冽を極め
水鳥の、
その羽根の下にある深さを忘れさせる
黄色や褐色の落ち葉を踏みしめ
水際を歩くと
褪せた草があたりを縁取り
冬が近い証を見せている
山間の、此処で透明を貪りたい
感情はどよめいて
靴を脱ぎ、爪先を水に浸す
嗚呼、と小さな声が洩れる
左右の足から欲望が拡がる
この、神聖な凍れる温度を
ふくらはぎまで、両膝まで
誘惑は鋭くこころを冒す
この、甘美な温度で身体を貫きたい
そろ、と踏み入れる翡翠の水面
靴を揃えてきただろうか