「あたしとキミとあの満月は二日前」
菊尾

自覚なくリンゴみたいな顔の色
跳ねるたび、イチダン浮き上がるカラダ
片足でタン、タン、とキミのシャツ掴んで

斜面から涙の玉を転がしていくコロコロと
光に反射して弾んだりして笑っているみたい
靴ヒモを解いて空の裏側まで飛ばすような競い合い
表が出たからキミがコーラ買ってきて

縦ロール三階建てのアパートから顔をチラチラ覗かせて
ソワついているあたしの部屋も頭もぐるりかき混ぜられたみたい
窓際の手すりをピンクにしたから写真に撮ってもいいよ
急げ、散れ、四次元混沌部屋内部
キミの一歩分につき、二品は片付けるよ

晴れた日に飛ばした願い事だらけの紙飛行機
窓から振り返りもしないで遠ざかっていった
飛ばしてしまえばちっぽけで何でもない
思考錯誤はもう飽き飽きだ

弾いたソロバンの計算が合ってるとなると
間もなくキミの指先が近寄ってくるのです
触れられれば弧を描きながら進む天体を連想するのです
二日前にバスタブに浮かべた満月は期限切れ起こしてないかしら
残っていたなら、キミにはそれを見せたいな


雲の上から霧吹きを使って世界を潤わせている
喧騒も硝煙も雨の匂いで覆い尽くされる
植物みたいなあたしたちはその世界の中で穏やかな呼吸を繰り返す
確かなリズムで聞こえるその寝息
消えていかないでね
いつまでも結んでいるから
飴細工のように溶けていかないでね


まるいまるい二日前の満月
ここはきっと誰かが覗いた万華鏡の中身です
月に染みた黒い影は誰かの黒目
くるくる回されて
混ざり合いながら
ダンスをしているんだ
あたしとキミ
手と手を取り合って


自由詩 「あたしとキミとあの満月は二日前」 Copyright 菊尾 2007-11-09 21:51:09
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