石畑由紀子


世界は
もっと不思議なままでよかったのに
虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまった全てが
恨めしい




君よ
その背中を覆う漆黒は
僕の夜だ
初めに与えたのは君のほうで
盲目にならないほうがおかしかった
舌に絡まり
胸を撫で
頬に張りつく部屋の湿度と
長細い弧の声とともに
乱れながら更けてゆく


君が解らない


漆黒を束ね
整えるたびに
まるで人が違ってしまう君の
理由なんて知らないままでいい
盲目にならないほうがおかしいんだ
初めから解っていたはずだ
夜に埋もれていたいのに
君は何度も束ねるから
僕も何度でも乱す

乱して
 束ねて
    乱して
        束ねて
 乱して束めて

      乱す
       もう
永遠に繰り返したって
        いいんだ




虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまったものにもう興味はない
僕にとって今
君こそが世界だ
何もかもに
惑わされたままで



束ねられた漆黒に
手をかける
また僕の夜が始まる






自由詩Copyright 石畑由紀子 2004-06-10 21:29:13
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