「アケビ」
菊尾

砂へ溶かしてしまいたい喪失
止まればいいのにと外へ向けて口にした
嘘はそれだけ
胸に詰まる、喉の内側の感情
あなたが噛み砕いてくれたらいいのに

出口を見つけられず入り口から戻った
幾度も繰り返したのは翌日に違う答えを期待したから
草で足を切っても歩いた
日が暮れるまで出口を探した

「それでいい。」と
「大丈夫だから。」と
その一言があればきっと眠れる
それだけでいい
それだけがほしいのに
いつも願いは朽ちていく


アケビの実は些細に甘い薄紫

あなたが食べたのは私の指ごと

止めたかったのは身体の内側

あなたの横顔がそこにある

距離が測れずその場にいるだけ

全てが等間隔に並べられた私達

解れて途切れてしまいそうになる心

認めてしまえば終着点は遠ざかる

この先なんて要らないから
今は隣で眠らせて


自由詩 「アケビ」 Copyright 菊尾 2007-11-07 19:52:57
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