深夜徘徊
佐々木妖精
街路樹をまたぎ
車道を歩き
寝転ぶ
浮遊感に満ちた気分がクッションとなり
アスファルトは優しい
主張の強いネオンも点滅することをやめ
自動販売機が定期的に息継ぎをしている
大量のジュースの中を、泳ぎ続けているのかもしれない
寝返りを打ち、地面に耳を当てると
数年前、まだこの道が完成する以前に潜り込んだ
セミの営みを感じた
舗装された道は人間に優しく
それ以外の生き物には冷徹だ
それはもしかしたら
人間が冷徹ということかもしれない
大学受験を終えた時
どこかの誰かが落ちたのも気にせず
浮かれていた俺のように
博愛主義者が
それ以外の人間を
無言で攻撃するように
しかし、それだけが全てでもない
そう思いたくて
起き上がり、セブンでボールペンとメモ帳を調達し
街路樹の根元に
「出口・羽化したいセミ専用」
とのメモを、土を掘り埋める
いるなら出てこいよ
野生の勘ってやつで