アンジーのシャープなハイキックが決まればだいたい問題なんて無いとしたものさ
ホロウ・シカエルボク



もう一度なんておいそれとは出来ないから
一度手にしたこれを最後まで続けていくだけさ
あれこれと手を出しても
出来る事なんてだいたい決まっているから
これだと決めたことを最後までやっていくだけさ
血気盛んな時代よりもいささかくたびれて
思い出すべきことを思い出せなくなっても
訳も判らずダウンして処方箋にお世話になってからこっち
こらえ性というもんがどっかに行っちまったこれからでも

雨合羽を着るのがめんどくさくって濡れながら帰ったんだ、「風邪を引くよ」とみんなに言われたけれど
雨合羽を着るのがめんどくさくって濡れながら帰った、風邪を引くよと確かに言われたけど
いまんとこ寒気も気だるさもこの身体に染み付いてはいない、もちろん
慢性的にあるものは別としての話
俺もまだまだ捨てたもんじゃないよ、そうだろ
やるべきことがあるやつは雨に濡れたって風邪なんか引かない

昨日しくじった事を思い出しながら
今日は違うやり方をした
満点とはいかなかったけれど
そこそこ上等には切り抜ける事が出来たよ
小さな一歩だって進めないでいるよりゃ多分に幸せだ

街は昨日から濡れている、雨雲が未練がましい女のようにどいていかなくて
いつまでもいつまでも通勤路の上でぐずってやがるんだ
なだめてなんとかなるもんならやってみたいと思わなくもないけど
我慢して濡れてるほうが幾分マシなことなのかもな
すでに決定されてる事を意地になって曲げたところでそれは根本的な解決には繋がりはしない
そんな履歴を誇らしげに抱えてるやつは幾つだろうとよっぽどケツが青いのさ
雨は降る、オーケー
俺はそのことについて異議を申し立てたりはしない
なぜなら俺は雨に濡れたって風邪を引くような人間じゃないからだ

電話交換手のうたをザ・バンドが歌ってる
そういやしばらく誰にも電話なんかかけてないなと
昼間のラジオで俺はささやかな断絶を悟る
ささやかな、とつけたのはそれがそう呼ぶしかないたぐいの断絶であって
使ってない部屋の電球みたいに切れていたって判らないってぐらいのものだったからだ
アドレス帳を何ページかめくってみたけど
俺から零れ落ちたやつがいったい誰なのかさえ見当がつかなかった
きっと次の同窓会で顔を合わせてくれないやつがそうなのさ
電話交換手、あっち方面の回線を切ってくれ
そっちにはもう、知ってるやつは誰もいないから

夜半のブラウン管からは知事が変わるというニュース
マニフェストという名のただの意気込み
俺は結構な歳だけど投票なんかしない
誰が誰になってもこの街は産声ひとつ上げることは無いのだ
そんなことぐらい本当はここに住んでる全員が判ってる
ただなにもしないでいるのは恥ずかしいと思うから
知ったかぶりをして誰かを持ち上げたりしてるのさ
俺はそんなやり方になんの興味も感じない
誰かが俺を持ち上げてくれるというのなら話は別だけど
世界を変えてみなよ
世界を変えて
雨に濡れても風邪なんか引かないやつになってみせろ、俺はテレビの表示をゲームにして
10月の誕生日に恋人に買ってもらったアメリカンプロレスのゲームに高じた、EDIT MODEで俺が生み出したアンジーという名の女レスラーは
今日もふんだんに身体をくねらせて俺を楽しませてくれたよ
彼女だってきっと雨に濡れたって風邪なんか引かない


だって、ハンドル次第じゃスティーブ・オースチンだってK,O出来るんだもの




自由詩 アンジーのシャープなハイキックが決まればだいたい問題なんて無いとしたものさ Copyright ホロウ・シカエルボク 2007-11-06 21:51:32
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