「 無 」
服部 剛

昨日のゴミ置き場で 
幸せそうに日向ぼっこしていた 
白い便器の蓋が 
今日は無い 

腰を痛めて十日間 
介護の仕事を休んでいたら 

先月の誕生会で 
目尻の皺を下げていた 
婆やの姿が 
すでに亡い 

便器の蓋は 
焼却炉の炎に燃え 

婆やの遺体は 
火葬場の炎に燃え 

煙突から 
ひろがる空へ吸いこまれる 
煙のひとすじ 








自由詩 「 無 」 Copyright 服部 剛 2007-11-06 21:17:03
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