「 おしまいのひ。 」
PULL.







その日、
ぼくらは冷たかった。
ぼくらはいつも凍えていて、
身を寄せ合って、
暮らしていた。
あたたかくなるように、
少しでもあたたかくなるように、
ぼくらはぼくらをあたため合って、
生きていた。

だけどぼくらは、
憎しみ合っていた。
ぼくらはぼくらをひとつも好きになれなくて、
みんなでみんなを憎しみ合って、
あたたかさを奪い合っていた。
そうして、


ひとり、
ぼくらは凍えて死んで、
ひとり、
ぼくらは少なくなった。
ひとり、
少なくなってぼくらは、
ひとり、
あたたかくなくなった。
ひとり、
あたたかくなくなると、
またひとり、
ぼくらは凍えて死んだ。


気がつくと、
ぼくらはたくさん死んで、
ぼくらはきみとぼくだけになっていた。
ぼくらはきみもぼくも好きになれなくて、
ぼくらはひとりもあたたかくなれなかった。
ぼくらは冷たかった。
ぼくらはいつも凍えていた。
身を寄せ合って、
冷たくて、
凍えて、
憎しみ合っていた。

きみが言った。
ぼくらが言った。


「もうおしまいにしよう。」


ぼくらは、
ひとつになることにした。
ひとつになって、
おしまいになることにした。

ぼくらは身を寄せ合い、
激しく、
擦れ合った。
擦れ、
擦れ合うごとに、
きみとぼくとぼくらの憎しみは高まって、
ぼくらは激しくて、
あたたかくて、
熱く、
なった。
熱くなって、
ぼくらは発火した。
火になった。
火は瞬く間に燃え広がり、
ぼくらの死体を飲み込んだ。


火がつくと、
ぼくらはひとつだった。
ぼくらはひとつの火になって、
どこまでも燃え広がって、
火の海の中を、
あたたかく、

燃えた。
ぼくらは燃えた。


おしまいの火、
ぼくらはあたたかかった。
ぼくらはひとつだった。
だけど空は凍りついていて、
冷たく、
降りつもる灰たちが、
燃え尽きて、
ゆく、
ぼくらの罪を、
しんしんと見つめていた。












           了。



自由詩 「 おしまいのひ。 」 Copyright PULL. 2007-11-02 08:20:25
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