加速度
川口 掌



土砂降りの雨の中
目前の車窓にしがみつく無数の水滴

一人にしないで
そんな声がして雫と雫が一つになる
あちらでくっつき
こちらでくっつき
少しづつ重なる
おもみを増してゆく

優しくしないで
そんな声がして近付いていた雫の一つが
す〜っと 下に流れ落ちる

あちらでも
こちらでも


降り続く雨の中
いつまでも繰り返される集合と落下

落下


そこに在る その事だけが
下へ
下へと運ばれ
言い訳となる

哀しさを寄せ集めては
哀しみの
重量に耐え兼ねて

そんな口癖を呟きながら

す〜っと流れ落ち

て 心は


心は

軽くならない



寂しさと

哀しさと

寂しさと

哀しさと



寂しさと

哀しさと

そんな心が引き寄せられ
想いに耐え兼ね

少しずつ
その速度を増してゆく

車窓を叩く雨はまだ止まない


伝わる雫の速度を増しながら





自由詩 加速度 Copyright 川口 掌 2007-10-31 23:54:34
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