加速度
川口 掌
土砂降りの雨の中
目前の車窓にしがみつく無数の水滴
一人にしないで
そんな声がして雫と雫が一つになる
あちらでくっつき
こちらでくっつき
少しづつ重なる
おもみを増してゆく
優しくしないで
そんな声がして近付いていた雫の一つが
す〜っと 下に流れ落ちる
あちらでも
こちらでも
降り続く雨の中
いつまでも繰り返される集合と落下
落下
そこに在る その事だけが
下へ
下へと運ばれ
言い訳となる
哀しさを寄せ集めては
哀しみの
重量に耐え兼ねて
そんな口癖を呟きながら
す〜っと流れ落ち
て 心は
心は
軽くならない
寂しさと
哀しさと
寂しさと
哀しさと
寂しさと
哀しさと
そんな心が引き寄せられ
想いに耐え兼ね
少しずつ
その速度を増してゆく
車窓を叩く雨はまだ止まない
伝わる雫の速度を増しながら