教えてください、かみさま
朽木 裕

雨が降り出しそうな匂いがする
風が湿って雲がよぎって
あぁ、絶対に降る。そんな夕暮れ

誰も知らない世界の真ん中で
誰もが気付かれないように泣いていた
生きているだけでもう奇跡みたいだ
欲しい物はいつだって見えない物

ってランクヘッドが唄う

「好きだよ」

運転席の彼が云う
世界中のどこでも交わされている言葉
ありふれていて常套句でそれでも私達に必要な言葉 大切な

雨が降りそうな空の下で赤信号がきらり

ひとの寿命が電池の寿命みたいに押しなべて一緒だったらいい
予測がついた方がいい
あと一体何年この人と一緒にいられるのか、

教えてください、かみさま

神なんて信じてないくせ私は思う
信じたらもっとこの人と一緒に生きていられますか?

(ずっと、好きでいてくれる?)

何も云えずに伏せた目
好きでいて
どうか嫌いにならないで

思った瞬間、ふれるくちびる
涙が出た

「なんで泣くの、」

「わかんない」

「…なんで泣いたのかなぁ」

「好きだからじゃ、ないの」

絶対の自信を持って云われたその一言に
深い愛情を、みた

「分かったようなこと云いやがってーくそーこんな時だけ大人の男かよ!」

「こんな時だけってなんだよ」

「だっていつもは馬鹿だもん!」

「なんだとー!?」










かみさま、お願いだから私達を引き離さないでください


散文(批評随筆小説等) 教えてください、かみさま Copyright 朽木 裕 2007-10-30 00:47:48
notebook Home 戻る