嘘からの解放
池中茉莉花

いつのころからか
こころとからだが辛いとき
いろんな病気の真似をするように
なっていた


呼吸が苦しいふりをした
通路でばったり倒れたまま、意識を失ったふりをした
突然、足が動かないふりをした

一度、それが信用されてしまうと
とことんまで
やらなければならなくなって

二度、三度と繰り返す


塗り固めていった
嘘の塊が

重く 重く なっていって
とうとう
自分自身を潰してしまった

ぺちゃんこになって
はじめて

小さな声で
嘘でした、とつぶやいた

なんにも責めずに
ただ にこにこと
笑ってくれた 先生の目が
こころにくっきり
焼き付いて


わたしは やっと
嘘をやめることができた


ふさがっていた気道は
ふんわりもとのまるさを取り戻し

わたしは思い切り空気を吸った

酸素が体中を満たし
わたしに走る活力をくれる

嘘のない
世界は
なんて自由なんだろう

これからは
どこまでも どこまでも
走って行けそうな
気がした


沈みかけた太陽が
そらを 橙色に染めていた
わたしをやさしく包み込むように


自由詩 嘘からの解放 Copyright 池中茉莉花 2007-10-29 09:26:27
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