夕焼け迷子
さくらほ

初夏〜秋



初夏よりも光る男が耳に触れそっと私のピアスで遊ぶ

瑞々し背中に並ぶ脊椎を一つ一つ数えて眠る

マスカラをしない瞳が好きだというそれは誰の瞳の話?


背中から愛されるその重み愛し朱に染まりて息づく体



金木犀香りを頼りに君と旅 行く先はないそれもまた良し

迷宮を行きつ戻りつするごとくうなじをなぞる君のくちびる

巻き髪を絡ませ遊ぶ君の指妖し動きに酔い深くなり

その胸にくちびる這わせ甘く噛む季節に反し熱帯びる君

大人の顔子供の顔と使い分け自由に旅する君は罪人

切れ長の冷たい炎に焦がされて心も体も焼き尽くされて

焼けた肌に冷たい我重ね一つに溶ける体温と時

汗キラリキラリと滑り落ちてゆく 濡れた黒髪君の情熱



乳足りて眠りに落ちる赤子のよう艶やかな頬にそっといたずら

若若し腕の予防接種の跡その横に並べる今日の証




空を見あげ明日の天気を星に聞く君 キラリと光る星は無口

春来たらそっと優しく解けるように蝶々結びで二人結わこう

愛の言葉丁寧語で語る君 埋まらぬものは年の差だけじゃない

グローブで頭撫でられ君の指恋しくなるけどそれは言わない

「また明日」その呪文がある限り笑顔になれるような気がする

バイクゆく 曲がり角まで見送らない 去るのはお互い様にしよう


季節巡り君は飛び立つ鳥になる我は動けぬ終の花なり

長身の君がもっと長くなる夕暮れの街どこへもゆけぬ

夕焼けに君は迷子の雲になる 空にポツリ私の中の


短歌 夕焼け迷子 Copyright さくらほ 2007-10-27 23:16:38
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君の歌