ひまわり色のミルクポット
いすず

だいじなおはなしをした日のこと
ふたりで寝転んで 思い出話をした

ひまわり色のミルクポットを知っている?
かぶりをふったあなたにおはなししてあげた

ある魔法使いが 乳絞りの女の子をミルクポットに閉じ込めてしまったの
ひまわり色でね 魔法の粉をかけるともとに戻るのだけれど
でもね おはなしでは彼女ではなく 王子様がもとにもどるの
それでその女の子はどうなるの?
さあ、おしまい
おしまい?

怪訝な顔のあなたにそっといった、わたしがミルクポットになったらどうする?
毎日せっせと磨くよ、そして・・・・・・
そして?
ミルクをいれずに、毎日キスするよ、いつでもどこにいようと
少し笑ってあなたに手を伸ばした、少し甘えながらそっと言った、
じゃあ、魔法使いになって元に戻してはくれないの?
傍にいて欲しいし どこにもいかない保証はないんだから
そのままがいいと思うよ
意地悪なんだ?
そう思うかな?
人間同士でなくてはいやでしょ?
ミルクポットのきみも案外可愛いかもしれない、いつまでも僕のものだから
そんなに不安?
いつも不安でいるよ
心配性なほど心配していたね

ミルクポットのおはなしでじゃれ合って ちいさな喧嘩をしたの
あなたの髪がひとみにかぶさって、王子様みたいだったの

ひまわり色のミルクポットのおはなし、今も覚えているかな
きっとあなたはいうんだ、僕の覚えていないことなどないよ
その太い両腕で抱え込みながら いつかのように
今日も 切ないくらいに 枕辺のおはなしがはじまるの


自由詩 ひまわり色のミルクポット Copyright いすず 2007-10-27 20:01:54
notebook Home 戻る