無題
紺
なんにでも
祈るのが癖だった
タンスの模様や 道端の石ころ
毎日
自分だけのかみさまに
******
壁には
サンリオのキャラクターが貼られている
小さなわたしがひとりで眠るとき
心細くならないように
だけど眠れずに
一晩中そのシールを見つめていた
*****
何が食べたい?と聞かれたので
記憶が食べたい、と答える
いつもいつも
記憶に溺れている
見つけることを忘れて
探してばかりいる
*****
テレビが好きだった
いつも賑やかだから
見なくても必ずつけた
テレビを換気扇のように
思っていた
******
今日は
体調が悪い
気分は サイテーだ
ただ体調が悪いことのいいところは
それがどんな理由にもなるところだ
今日は何も考えられない
思いもよらない
******
ブランコの上では
自由に届きそうだった
無茶な乗り方をして
飛んで行ってしまいそうだった
90度近くまで漕いだ時
空しか見えなくなる一瞬が好きだった
*****
雨が降っている
死ぬ、という言葉を使うと
死期が早まるかのようなニュアンスで
怒られる
都合よく
今日だけ消えたい
*****
かみさまは
留守だったんだよ
あの日も
あの日も
本当は口で言うほど
毎日は嫌じゃないんだ
案外楽しいし
なんとかなっている
だからかみさまは悪くない