カツのころも
服部 剛
棚の上に置かれた
小さい額の中は
去年の祖父の墓参り
過ぎた日の
こころの
咎
(
とが
)
を忘れたように
墓前で桜吹雪につつまれ
にっこり並ぶ
母と祖母
雲ひとつない
秋の夜空に昇る
まあるい月を見に
散歩に出かけて
帰ってくると
今年米寿の姑は
「今夜のおかずは美味しいよ」
当然そうに呟いた
食卓を照らす
らんぷの下
腰を丸めた姑と
頬のたれた初老の嫁が
屈みあい
串カツにパン粉を
まぶしている
自由詩
カツのころも
Copyright
服部 剛
2007-10-25 23:13:26
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