黄色い花
ふるる

冷たい井戸の水を汲んだら
とたんに雨が降ってきた
開け放した口に次々と
重たい雨粒が入ったり砕けたりした

久しぶりに自由に飲める水だけど
濡れて帰ればまたぶたれる
痣は青い花のように
あちこちに咲いていて
濡れて鮮やかになる

とうさんはわたしの髪をつかんで引きずり回す
にいさんはわたしの服を破く
おとうとはわたしの食べ物をうばう

お腹がすきすぎると
身体が浮くようなかんじがする
食べ物を
探す指はいつもこくうを掴む

かあさんは庭でいもうとたちに混じって
遊んでいる
そこに女の子たちが次々と加わる
レースのリボンや
赤い靴を履いて

おいでよこっちは楽しいよ、と
女の子たちは笑う

わたしは重たいバケツをぎちっとぶらさげて
まとわりつく髪を払う
おいでよこっちは楽しいよ、と
笑うのなら
わたしと同じこくうをつかんでから
笑いなさいよ

治りかけの痣は黄色で
つついても痛くない

じっとりと濡れた地面は
生き生きした緑の草でいっぱいで
その感触は優しい
わたしは重たいバケツをぶらさげて立つ
目の前には濡れに濡れていっそうみすぼらしい家がある

外の方がいい
空は遠くまで灰色だけど
白もあるしずっと向こうは晴れている
晴れている所は光が当たっている
その下にはきっと黄色い花が沢山咲いている
身体が浮くようなかんじがする

わたしはいつか
あそこに
行く

女の子たちは
おいでよこっちは楽しいよ、と
笑うけど
わたしにはちっとも
楽しいところには
思えないから

いつかぜったい
あそこに




自由詩 黄色い花 Copyright ふるる 2007-10-24 21:37:40
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