キティホーク
佐野権太
子供たちは
キティちゃんのホークで
なぽりたんを召し上がる
何千キロという海の大きさも
何十万ガロンという容積も
その喫水の深さも
まるで想像できない
きっと、大切なことなのだろう
それより僕は
百年前の丘で
納屋から引き出された
プロペラと巨大な羽根が
風を叩きながら滑走する浮力に
わずかな瞬間の歓喜に
思いを馳せる
きっと、いけないことなのだろう
この海も
この空も
過去も未来も
どうしようもなく
つながっていて
そこには
数え切れないこどもたちが
漂っているというのに
子供たちは
夕焼けに染まった海岸みたいな
頬っぺたをふくらませて
なぽりたんを召し上がる
キティホーク
その
柔らかく尖った
先端