空はまだ灰色に染まっていない
松本 卓也

背中から右足にかけて
立ち上がるたびに
座り込むたびに
鈍く鈍く走る痛みは
もう一月ほど続いている

目の回るほどと言う比喩が
何処までも陳腐に響くほど
此処最近の記憶は
仕事と痛みで埋まっていた

―そろそろ産まれるんだ―

少し照れながら笑う向こう側の声
一足どころか三足ほど先で
幸せとは何であるか
思いださせてくれていた

単一な空虚に埋もれた短い秋の片隅で
生まれてくる慶びに捧げた祝福が
灰色に塗りつぶされた空に
一際鮮やかに彩られている

宛てなく連なる日々の中
まだ笑う事ができる
思い出させてくれた声に
あらん限りの感謝と
精一杯の負け惜しみを込めて

おめでとう
願わくば
お前に似ない事を祈ってるよっ


自由詩 空はまだ灰色に染まっていない Copyright 松本 卓也 2007-10-23 22:28:09
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