「 卵 」 
服部 剛

先日詩人の夫婦に会い 
日々寝不足の夫の目に
くまができていたので 
妻に「大丈夫?」とメールした 

妻の名前で受信した 
返事の中味の文字からは 
「大丈夫だよ」と
夫の顔文字がほほえんだ 

妻という枠に囲まれた 
夫の文字をみつめたぼくは 
(夫婦はふたりでひとりだなぁ) 
ほのぼのとお茶をすする  

(パソコン画面の余白には) 
(きみをしろみでつつまれた)
(ひとつの卵が浮かんでみえた) 

階段の下から
「あなた今夜は月がきれいよ」
初老の母が親父を呼ぶ声がする

ふと本棚に目をやると 
朱色と灰のふたりの詩集が 
寄り添うようにたっていた 





自由詩 「 卵 」  Copyright 服部 剛 2007-10-23 22:17:06
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