降り来る言葉 XXXIII
木立 悟




雨は去り
野は息を継ぎ
有限を照らす


まぶしさをやめず
かけらは香る
満ちた川を
鳥は離れる


雨を追い抜く雨のほうまで
文字は幾つかつづいてゆく
声や羽が
曇に沈む


音のかたわらに落ちる音
人ではない
鳥ではない


たどりつけない遠くがあり
それすら越える指がある
鬼を抱く手と
うしろすがた


目の内そとに揺れる糸があり
口に入るたび消える糸がある
まぶたからはじまるかたちの重なり


聞こえないふりをする気だ
ひとりしかいないのに
あなただけに降りそそぐのに


思いどおりに描けた絵を燃し
煙を煙に描きなおす
絶え間なく思いから外れながら
なお思いでありつづけながら


鳥は旋りつづけている
水面は 動かないものにやさしい
指のとなりに響く指


路地に立ち
空へひらかれる
とどかないうた
とどかないうた


つかみ かじり
つかみ かじる声
流れ去る香のまぶしさを
雷鳴のように引き留める

















自由詩 降り来る言葉 XXXIII Copyright 木立 悟 2007-10-22 16:23:25
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