人を想う
宮市菜央

はじめまして。
夫との初めてのドライブの別れ際に、あなたのことを聞きました。
あれから2年。
ようやくお会いできましたね。



あなたがいなくなってしまった歳を、夫はもう5つも越えてしまいました
今もあなたは彼の中で息をしています

見知らぬ魂の間で雨風に耐えるあなたの石を
夫が丁寧に洗っていきます
私は届かない涙を
会えなかったあなたに注ぐばかりで

夫と一緒にいたずらして回ったというあなたの前に
一握りの線香を手向けながら
「白煙が好きだろうから」と
爆竹で遊んだ昔をついさっきのように手繰り寄せて
夫は手を合わせました

あなたに会えたら どんな顔をしましたか
あなたの大切な友達の人生に寄り添うことを許された私を見て
どんな言葉をくれましたか


あなたと彼をつなぐ扉の前にうずくまり
私はそっと手をのばします


風は石の冷たさでひそやかに冬の合図を告げました
また来ます
ひとひらのぬくもりをたずさえて
それは彼と私の宝物
脈打つからだのあたたかさという


自由詩 人を想う Copyright 宮市菜央 2007-10-22 16:04:13
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