人を想う
宮市菜央
はじめまして。
夫との初めてのドライブの別れ際に、あなたのことを聞きました。
あれから2年。
ようやくお会いできましたね。
あなたがいなくなってしまった歳を、夫はもう5つも越えてしまいました
今もあなたは彼の中で息をしています
見知らぬ魂の間で雨風に耐えるあなたの石を
夫が丁寧に洗っていきます
私は届かない涙を
会えなかったあなたに注ぐばかりで
夫と一緒にいたずらして回ったというあなたの前に
一握りの線香を手向けながら
「白煙が好きだろうから」と
爆竹で遊んだ昔をついさっきのように手繰り寄せて
夫は手を合わせました
あなたに会えたら どんな顔をしましたか
あなたの大切な友達の人生に寄り添うことを許された私を見て
どんな言葉をくれましたか
あなたと彼をつなぐ扉の前にうずくまり
私はそっと手をのばします
風は石の冷たさでひそやかに冬の合図を告げました
また来ます
ひとひらのぬくもりをたずさえて
それは彼と私の宝物
脈打つからだのあたたかさという