ヨルノテガム








彼は耳を澄ます
対する街のビル建物も耳を澄ます
皆は冒険の途中であるか
冒険の後の反省中であろうか
言葉が街に無かった
動く音だけが賑わう
携帯で歩き喋るネクタイも口パクであった
子供の泣き声はする
駅の電車待ちびとは顔の目鼻口がはっきりとは無かった
音は歩いている
幽霊たちは
電車を待っている
均等に規則正しく離れて
開閉ドアの在処を知っている
電車は訪れる
彼らは8割方連れ去られる
電車は訪れる
8割方はまた降りてくる
人間は歩いている
彼は耳を澄ます
足音の気配が遠くの方へ消えていく
通過電車の僅かな轟音の中、彼は奇声を上げる
声は連れ去られる、ひと駅先で待っている
彼は冒険、「冒険」という音の力を信じていた










自由詩Copyright ヨルノテガム 2007-10-21 01:49:54
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