貼り紙の唄 
服部 剛

昨日
柿を取ろうと
腕を伸ばした塀の上から 
落っこちた親父が 
とっさに捕まった物干し竿が 
身代わりのように 
ぐにゃりと折れた 

午後
急に画面が消えたパソコンを 
電気技師はせっせと直し 
風の歩みで帰っていった 

今朝
我が家の門の
インターフォンが 
なぜか急に鳴らなくなり 
母ちゃんは首をひねって 
「故障中」
の紙をぺたりと貼った  

昼前 
職場の老人ホームの風呂場で 
水の入ったバケツを流したら 
腰が ぎくっ となってしゃがみこみ 
縮んだ石に私はなった

レントゲン写真には 
疲れて痛んだ筋肉につつまれ 
ひとすじの白い背骨はつみかさなって 
不思議と崩れず立っていた 

昼過ぎ 
上司の車に送られて 
びっこを引きながら
口を結んで
我が家の門に帰ってくると 
「服部」の表札の横に 
「故障中」の張り紙が 

  けせら〜せら〜 

風に揺られて唄っていた 





自由詩 貼り紙の唄  Copyright 服部 剛 2007-10-20 22:03:06
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