少年ファンタジー
狩心

ガリガリ音がしたと思ったら、
空からカキ氷が降ってきた
シロップも流れてきた
あか、あお、きいろ、信号機みたい、
なんで降ってくるのか分からないまま
ボクは空を見上げていたんだ
あの頃の、戦争と同じように

この戦争がなんで起きているのか分からない、っておとうさんは言ってた、
分からないまま巻き込まれて、一部の人たちの思惑に利用されてるって言ってた、

おとうさんは今、工場のベルトコンベアーに従って、
何に使うか分からない部品を、言われた通りに作ってる、
最低の作業だって言ってた、
たしか、資本主義って言うんだって。

何も分からないまま、放課後
進路指導の先生に、校庭のトラックを何度も全力疾走させられた。
ボクは陸上部じゃないのに。全力疾走することに意味はあるの?
海に潜るダイバーとかいいな。

家に帰るといつも、
おとうさんは何も説明しないで、ボクに暴力を振るった。
それって、悲劇?
立派な人間に育つ為の教育だって言ってた、
たぶん、それって、ウソ、

死者が出なかったら、戦争してもいいのかな
自分の国に利益があれば、戦争してもいいのかな
たぶん違う、
嘘を吐いて、人を道具のように利用することがいけないんだ。
せんせい、人の命は尊くなんかない、
みんな平等だって、命も平等だって、せんせい言ってたけど、
げんじつはそうじゃない。

ボクは騙されない。
空からなんで、カキ氷が降ってくるのか、分からないままにしない、
今のボクは、昔よりも体が大きくなって、物事も自分で考えられるようになった。
だから、おとうさんが殴ってきたら、抵抗するんだ。
そんで、聞くんだ、
おとうさんのほんとうの闇を教えてって
家族だから、
それにボク、おとうさんのこと好きなんだ

ボクの住む国もいつか戦争するかもしれない、
その時ボクは、なにができるだろう、
上っ面の大義名分なんて、まっぴらだ
ボクたちは道具じゃない、
それにこの豊かな社会も望んじゃいない、
生まれた時からそうだったんだ、
もし、この豊かな社会を維持する為に、戦争が必要だと言うのなら、
ボクはそんな社会いらない

ボクたち若い人は、戦争を知らない
次に起こる戦争で、もし、死者が一人も出なくても、人の心はたくさん死ぬよ、きっと。

学校の帰り道、なんにも知らないボクら、
空からカキ氷が降ってくる、甘くて冷たい
まるで戦争みたいな味さ。
ボクの中に溶けて、なくなっちゃった・・・

人を殺したら、100億円あげると言われたら、ボクは人を殺すかな
友達に聞いてみたら、絶対殺すって言ってた、
喧嘩した、友達と初めて喧嘩した、
友達が鼻から血を流して
「なんでそんなにマジになってんだよ、かっこわりぃ、馬鹿みたい」って言って
どっか行っちゃった
次の日から、自分の欲望に嘘吐きな偽善者だって言われて、みんなにイジメられた
ボクが暴力を振るったから、ボクは今、殴られている、だからそれはさせていい、
でもボクは絶対、人を殺さない、
ボクが欲しいのはお金でも物でもない、正義でも、勝利でも、力でもない。
ボクが欲しいのは仲良しの家族、
ボクが欲しいのはほんとうに心から分かり合える友達
ボクはなんで自分が生きてるかも分からないような馬鹿だけど、
それだけは分かるんだ、

今までボクは、なにもやりたい事が見つからなかったけど、
決めたよ、
ボクは、ジャーナリストになる


自由詩 少年ファンタジー Copyright 狩心 2007-10-19 23:31:10
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